音楽修辞学

バロック時代の音楽観3

「私の考えでは、音楽はとりわけ心を動かさなければならない」


とは、C.P.Eバッハの言葉ですが、
当時、音楽というものは、人の感情を揺り動かす力のあるもの、

と考えられていたようです。

 

だからこそ、音楽は人の心を癒し

楽しませてくれるすばらしいもの、

と考えられていたわけです。

 


さらにおもしろいのは。。。


遠くギリシアのプラトン以来、

 

身体を清めてくれるのは、医術、

魂を清めてくれるのは音楽

 

との位置づけがあり、

 

音楽が魂を癒し、清めてくれることで、

人間は徳を向上させ、神を賛美することができる、

と考えられていました。


前に紹介しましたデカルトの「情念論」では、

音楽がいかにして情念=アフェクトを呼び起こし、

 

音楽のどんな要素がどんな情念に対応するかの議論が展開されています。

 

それから面白いのは、音楽と数の関係

「音楽と人間のこころのなかに、一定の数字的比例が共有されるために、
音楽はある情念を聞き手の心に呼び起こすことができる。」(キルヒャー)

「音楽は魂がしらずしらずのうちに数を数えること」
(ライプニッツ)

ちょっと現代の私たちにはわかりにくい考え方ですね。
この情念というのも、今の私たちが考える、
いわゆる感情(気持ち)とは、ちょっともう少し違うようです。
もっと奥深くの、身体感覚をともなう心の感覚。
ただ、ここではこれ以上私が書くといい加減になってしまうと思うので、
興味のある方は、デカルト関連のいろいろな本を読んでみていただければと思います。

それから、昔の人たちは、自然界の中にある、
数的な美しさ、というものを発見し、
「数」というものをさまざまな存在の原理でもあると
考えていたそうです。
また、ある特定の数に、いろいろな意味合いを見出してもいました。

3・・三位一体
5・・キリストが十字架上で受けた傷の数
7・・神のめぐみをあらわす聖数
などなど

自然界の中にある数的な美しさって何???と思われた方、
ちょっとおすすめDVDがあります。

ドナルドの算数マジック というビデオをぜひ見てみてください(^.^)

ドナルドが迷い込んだ、不思議な数の世界。。。
数学と音楽の父、ピタゴラスの話。

音階のなりたち、自然界の中に象徴的に存在している「数」、
ペンタグラムと黄金比。。。子供向けの映画ですけれど、
内容はきちんしていて、しかもとても楽しく見ることができます!

数、というものが、昔の人たちにどのように感じられていたのか、
というのがよくわかります。
そして、音楽も、数と関係のある、理系の学問だった、というわけです。

ここまでくると、どうも、この時代までの音楽の存在というのは、
どうやら、宗教的、哲学的、さまざまな点で、
今の私たちにとっての音楽とは、意味合いが、
かなり違っていたのだろうな、ということがわかってきました。

それでは、次回は C.P.Eバッハの著書 
正しいクラヴィーア奏法の内容について考えてみたいと思います。
(続きます)