速さに関する言葉

andante


言葉から私たちがうける印象は、なーんか遅い?って感じでしょうか?


tempo はイタリア語で「天気」のこと。

 

テンポが速い、遅いことそのものが重要なのでなく、
「気持ち」が、テンポを決める、ということ。


che tempo fa ogghi?
今日の天気は?

といいつつ、イタリアの人がそういうの、そんなに気にしてるとは思えません。。。

 
というのも、たとえば、大都会では、雨になると「傘売り」が出現するんだそうです。
日本のコンビニで売っているようなのでなく、

「どっかからとって来ました~」という風情の傘、
開いたら閉じなさそうな、

いやいや、そもそも、開くのか???という傘。

 
いったい誰が買うんだ!?

 
また、テレビの天気予報。チャンネルによって違うことがある!


イタリアに留学してたことのある友人に聞いたら、
「だって、データは同じでも、解釈するのは人間だし~。
違ってあたりまえ。それに、あっちの人は、そんなの気にしてないよ」
晴れようが、雨が降ろうが。。。心配してもしょうがない!!
Allegro に行こう!
あ、話がそれてすみません。。。

さて、アンダンテは、歩くような速さ、ともいいますね。
これが曲者で、一口に歩くといっても、先ほども書きましたように
さまざまな気分によって速さは変わってきます。

また、実はイタリア語では、Andante とは、歩くと言う意味ではありません。
andare という動詞からきていますが、

これは「walk」ではなく、
「go」という意味です。


早速辞書を引いてみました。

Andante は 現在分詞として形容詞のような働きをします。

最初の意味がなんと!
1、今の
anno andante 今年 という意味だそうです。
確かに「時」は流れていきますね。

2、つながった、とぎれのない
特に壁などが途切れない、という解説が書いてありました。
これまた、ずっと続いていくイメージですね。

3、平凡な
in tessuto andante 安物の生地
これはよくわからなかったのですが、目をひかない、という感じでしょうか?
良くもなく、悪くもなく。。。ありきたり。。。

速さにまつわる音楽用語をこれまでいくつか見てきましたが、
いわゆる「音楽用語辞典」に載っている日本語の言葉とは、どうも、
もともとの意味からずれがあるものが多いようです。


 

allegro


Uomo allegro, Dio l'aiuta. 
笑うかどには福来たる(陽気な人は神が助けてくれる)

音楽の国イタリア。そこであなたは空港にいそがないと、
飛行機に遅れてしまいます。
「えっと、速くってなんだっけ?あ、アレグロ
運転手さん、アッレーグロ!ペルファヴォーレ(お願い)」

 
ところが運転手さんは、とつぜん陽気に歌い始めました。。。
「え~!!? じゃあ、モルト アッレーグロ!!お願い!!」
さらに大声で歌ったり、笑ったりの運転手さん。
???意味不明のあなた。。。

実はイタリア語のアレグロには、速くという意味はありません。
陽気に行きましょう!楽しく!明るく!ということなんです。


イタリア語の辞書には、
1、陽気な、快活な
2、(会話、劇などが)楽しい、快適な
3、(考え、概念が)明るい、朗らかな
  (色彩が)鮮やかな
などと書いてあります。

なので、タクシーの運転手さんは、サービス精神たっぷりと
大声で歌ってたんですね。(^^)

 

同じ意味を表す英語として書いてあったのは・・・cheerful! なるほど、ですね。(^^)
ちなみに皆さんおなじみのバイエルでは
Allegro,Allegretto Moderato,Comodo...
といった表示が多いですが、これらに共通しているイメージは
ほどよく、心地よい。。。

Allegroに、陽気な、楽しい気分でという意味があることは書きましたが、Allegretto というのは、その状態がちょっと穏やかな感じ。

 
そういう気分だからこそ、テンポは遅くはなりませんし、
「速く」でも間違いではないのでしょうけれど、
単純に アレグロ 速度記号 速く と覚えこむと、
曲のキャラクターへの理解を間違う可能性もあるということです。

日ごろ私たちが何気なく使っている音楽用語と思っている言葉も
実はイタリアの人たちが使う生きた言葉です。
そこから受ける意味、というのは、一言では説明しきれない
たくさんのニュアンスを持っていることが多いので、やはり
教える立場としては、知っているにこしたことはありませんよね。

先ほど紹介したエピソードは、

「これで納得!よくわかる音楽用語のはなし」
関孝弘/ラーゴ・マリアンジェラ共著(全音) からの引用です。


他にもいろいろおもしろい話が載ってますので、
これからも時々ご紹介したいと思います。


moderato


Moderato ということばは、音楽用語辞典を引くと「中くらいの速さ」などというわけのわからない意味がのっています。
「先生、中くらいって?」「速くもなく、遅くもないってことよ」と、これまたわけのわからない説明をレッスンでしてたりして。。。(~_~)
この言葉は辞書には、

ほどよい、手ごろな

などと書いてあります。

たとえば、料理で「モデラートな火」
強風でも無風でもない心地よい風は「モデラートな風」
パーティーでは「モデラートに食べて飲んでね」など。

Comodo は、ずばり、安楽な、気楽に。
una vira comoda で、快適な生活・・・おくってみたいですね~

この辺のイメージ、ピーターコラッジオさんの
すてきにピアノ第4巻「音楽のイマジネーション」(ショパン)
にわかりやすいイラストで書いてあります。
生徒さんに見せられると喜ばれますよ。

でも、バイエルって、ほどほどに、陽気な、楽しい気分で、気持ちよく弾く曲が多かったのですね。。。しらなかった。。。

そういえば、バロックダンスの浜中康子先生も、
踊る時に大切なこととして、リズム、ブレス、そして
快適な気分!といわれてましたね。

そして思わずそういう風に身体が動いてしまうもの、それが音楽ですね。

Presto


 

Presto

この言葉を見ると、なんとなくあせってしまう気分になりませんか?
早く、早く!とせかされてるような。
曲の最初に書いてあると、「超特急!!」なんて思ったりして。。。

確かに、急いで!というニュアンスはあるのですが、動作が「速い」、というよりは、時間的に「早い(短い時間)」、というほうの意味が強いみたいです。

 
1、すぐに、まもなく
2、速く、いそいで
3、容易に、たやすく
4、早くから、朝早く

物凄く速い!という感じは思ったほどないですよね。
イタリア語の文を少し。。。

Normalmente vado a letto presto
  Normalmente ふだんは
  vado a letto ベッドへ行く(寝る)
  presto 早く

つまり普段は早く寝ます、ということなんですが、イタリア語は日本語と同じで、主語がなくてもしゃべれます。それくらい動詞が変化するので、わざわざ「私が」などと言わなくてもわかるんです。
vado とくれば、主語は「私」

Presto!Aiutatemi!
早く!助けて!!

時間がはやい(短い)・・・というところから、簡単な(容易にできる)と言う意味も出てくるんですね。

si fa presto a dire
言うのはたやすい。(直訳すると、言うことは、行なう事よりも簡単)


イタリアでも日本と同じような言い方をするんですね。

ようするに、Presto と書いてあったとたんに、「可能な限り速く」するというほどのニュアンスはこの言葉にはない、ということなんですね。

実際先日イタリア語のレッスンの終わりにインストラクターが
「arrivederci a presto!!」(また近いうちにね)
と言った時には感動しました!

 

 


Vivace


 

音楽用語辞典には、活発に、アレグロより速く、などと書いてあります。

 

活発で、生き生きしているイメージから、

音楽用語としては「速さ」の記号、というイメージなんですが、

 

辞書で意味を調べてみると、どちらかというと、表情的表現のようです。


vivace (lively)

1,活発な、元気のよい、すばしこい 

bambino vivace 元気のいい子供

 

2,(頭の)回転のはやい、鋭い

 

3,生き生きした、活気のある 

stile vivace 生き生きとした文体

 

4,鮮明な、鮮やかな 

colore vivace 鮮やかな色

 


ついでにvivoも調べてみました。3番目の用例は興味深いですね。


vivo(alive)

 1,生きている

2,活発な、生き生きした

3,(感情が)強い、烈しい  

vivo rimpianto 深い悲しみ 

(手紙の中などで)

porgo  vivi auguri こころからご挨拶もうしあげます。

 

楽譜に何か書いてある場合、言葉の真のニュアンスを知り、

なおかつ

「楽譜から作曲家の意図したことを汲み取ること」

が大切です。

 

その作曲家がどう思って、楽譜のその部分に、その言葉(記号)を書いたかは、もう、未来の時代の私たちにはわからない、けれど、それをわかろうと努力することが大切なのでしょうね。

 


テンポを変える言葉


テンポを変える言葉

 

テンポを遅くする言葉を調べてみたら、面白いことに気がつきました。
「遅くする」言葉として、だいたいよく出てくるものに、
(1)allargando
(2)ritardando
(3)rallentando
がありますね。

(1)をよーーーく見てみると。。。(al)larg(and)o
なんと、Largo の文字が、


(3)には、(ral)lent(and)o
Lento という文字が見えます!!(もう知ってたって?すみません(^^ゞ)

Largoはみなさん覚えておられますか?
Lento とどっちが遅いんでしょう???
(そういえば、ドビュッシーに”Lentoより遅く” って曲、ありましたね)

まずは、Lento から。。。

Lento (slow)
同じ意味をあらわす英語としてslowがあげられていますから、これは
ほんとに「遅い」わけですが、用例となるとちょっと雰囲気が違ってきます。

passi lenti ゆったりした足取り
viaggio lento 悠長な旅

遅いというより、ゆったり、という感じでしょうか?


Largo幅広い、というニュアンスでした。
それも単にひろい、というより
服ならブカブカ
景色なら、まるでロシアの平原、何時間走ってもおんなじ景色。。。

だんだん混乱してきたあなた!
(1)allargando
(3)rallentando
どっちが、どのように、「より遅く」なると思いますか?
じっくり言葉の意味を味わってイメージしてみてください。

イタリア語の辞書を引いて、最初に出てくる意味は


○Largo

幅広い(wide)

○tardo のろい,遅れる

○Lento 遅い(slow)

 

日本の音楽用語辞典にはこう書いてあります。

●allargandoだんだん遅くしながらだんだん強く

●ritardandoだんだん遅く

●rallentandoだんだんゆるやかに、だんだんレントに


言葉の基本にあるニュアンスは、

allargando 広げる、拡大

ritardando 遅れる

rallentando 速度を緩める


また、広がる、にしても、具体的に、

広い場所を想像してみる。

目の前に広がる海。山の頂上から見た町の光景、飛行機の中から見下ろした地上の様子。。。


五感をフルに使って、その言葉で作曲家があらわしたかったことを理解しようとしてみると、不思議とダイナミックスの変化なども自然とついてくるみたいです。


大切なことは、言葉を日本語におきかえてわかったつもりになるのではなく、自分の中の「感覚」「感情」をその言葉にシンクロさせることなのではないでしょうか?